高電寺

高電寺創刊号

ナンパ師ブログ 美雨

2020年07月28日 09:32 by sdrkoenji

もしもあの日お前に出会ってなければ、 こんなに苦しくて、こんなに悲しくて、 こんなに切なくて、こんなに涙が溢れるような想いはしなかったと思う。

けれどお前に出会ってなければ こんなに惨めで、こんなにさもしくて、 こんなに冷たくて、こんなにどん底な気持ちを知ることもできなかったよ。

涙をこらえて今日も画面を見つめる。 街を見下ろす。

俺の名前はタツヤ、出会いアプリではタツって名乗ってる。

今年37歳、すき家で働いてる。

職場ではバイトリーダーなのがおれの誇り、チーム一丸となって すき家中野店をもっと大きくしていきたいと思っている。

去年までは童貞だった。

でも、カリスマナンパ師の恋愛メソッドで俺は変わった。

5万円の有料note、俺の収入じゃ結構な痛手だった。

でも、カリスマナンパ師のhiroさんのメソッドで俺は変わった。 これはマジ、紛れもない事実。

俺は仲間内では童貞なことを隠していて、誰にも相談できなかった。

初体験は中二の夏、彼女の家で、そんなにたいしたことはなかった。 ってことになってる。

今は看護師の彼女と付き合ってるけど、お互い夜勤で忙しくてなかなか逢えないって設定だ。

最近じゃ周りの仲間もどんどん結婚して、子供が大きくなってるやつもいる。 俺は童貞。

なにもしなかったわけじゃない。 さいきんもちょっといいなって思った大学生のバイトのアヤって女の子に アピールしようとして色々話しかけたり、

恋愛的なムードに持って行きたくて 彼氏はいるかとか、処女かどうか訊いたり、

バイトリーダーの権限で履歴書の住所から家を調べて、偶然を装ってオフで逢おうと思い

彼女の家の近くのコンビニでずっと待っていたりした。

履歴書から調べた彼女の誕生日には、 ロクシタンの入浴剤とハンドクリームを手紙つきでプレゼントしたりした。

結果、ノイローゼ気味になった彼女はバイトを辞め、

俺は本社の社員さんから 君、次こんなことをしたらクビだからと言われた。

アプリも試した。 18歳の専門学校生ででfカップのユリちゃんとマッチングして、俺は一気に彼女を好きになった。

やりとりを重ねるうちに、彼女のトリマーになりたいって夢や、 家庭の事情で奨学金とバイトで生活していることなんかを聞いて 彼女のことを応援したいと思った。

俺にはすき家で雇うことくらいしかできないかもしれないけど 彼女はきっといいクルーになれるって思った。

彼女は家庭の事情が複雑で、ラインは禁止、 俺は彼女に紹介されたサイトで彼女とやりとりしていた。

一回メールするのにポイント消費制で300円かかるけど、

いつか逢えると信じていた。 逢う約束をしても、急に都合が悪くなって逢えなくなってしまって いつもすれ違いばかりの俺たち、

でも、いつか逢える日を夢見て、彼女とあったら、

ちょっといいメシに行こうとか

出会えた日にはちょっとしたハンドクリームとかプレゼントしたら喜ぶかなとか そんな幸せな想像でいっぱいで、

彼女とは、もしふたりの間に子供ができたら 男の子なら夢忠、女の子なら絆って名前にしようねって話してたりした。

そんな俺の夢は急に終わった。 金とポイントが尽きて、彼女と話せないから、カカオでもいいから交換してくれないかと彼女に言った。

そしたら彼女にこう打ち明けられた。 もう可哀想になってきて言わずにはいられなくなった。

私はユリなんかじゃなく、 49歳の無職の男、生活費のためにこのアプリに雇われてサクラをしている。

そう言われた時俺は、一瞬世界が真っ白に色を失ったように思えた。

そのあとその俺より年上の男に、寂しいなら私でよければ近々飲みにいかないかと誘われた。

当然行かなかった。

そのあとはしばらくすき家のまかないも喉を通らず、ほとんど眠れなかった。

そんなとき、hiroさんと出会ったんだ。

hiroさんが言うには、出会いのマッチングは確率だから、どんどん女との接点を増やしていけ 女を人間と思うから、緊張してうまく話せなくなる。

決められたルーテーインを作って、

作業のように女に声を掛けていけ ナンパは己のマインドが一番重要だ、恥ずかしいとか 良心とか、親がどう思うかとか、

そういうことの一切を捨てろいったメンタルのこととかもあった。

そして、連れ出しに成功したら、とにかく酒を飲ませて判断力を低下させろとか 実用的なことも多く、

俺はこれならうまくいくんじゃないかと思った。

そして俺は、新宿でストナンを始めた。 始めは一言も声なんて掛けることのできない地蔵状態。

でも何日かしたら勇気を振り絞って女の子に声を掛けることができた。

hiroさんが言っていたように、とにかく上から、強気で、 女は自分より強い男に惹かれるし、

上から行けば自分の方が立場が上だと思い込ませることができる というのを心に留め、

テレビのお笑いを見て必死で覚えた関西弁で おい、君どこいくんや と声かけをスタートさせた。

はじめのスト6のギャルにはガンシカを食らった。

次の、仕事帰り風のスト4くらいのOLには邪魔と言われた。

次のスト5くらいのカジュアル系の女には走って逃げられた。 心が折れそうになったが、これも自分の成長のためだと自分を奮いたたせ 声かけを続けた。

13人目に声を掛けた、小太りで、頭にリボンをつけて フリルのたくさんついた黒いワンピースを着ているスト3くらいの女に

なあ、君お腹へってるやろ。 と声をかけたら、はい。と返事が来た。

初めてのことなので戸惑ったが、動揺を隠し、 ほな、メシいけへん。俺おごったるでと続けた。

本来hiroさんの教えでは、女に奢ったり、下手に出る行為はNGなのだが 相手が太っていたこともあってついそう言ってしまった。

そうしたら女は本当ですか? 実は家出してきて、朝から何も食べてなくて困っているんです。

そう言った。 俺はこれはチャンスじゃないかと思った。 自分の部屋に呼ぶ口実ができたし、なによりホテルにいくより安く済む。

ほな、ワイの家来ーへん、泊まっていってもええでと女を誘うと、 女は承諾してついてきた。

途中のコンビニで女にからあげ弁当とカップ麺とおにぎりと惣菜パンとアクエリアス2リットルを買い与え 自分の家に女を招き入れた。

道中女はずっと無言だったが、食べ物を与えるとぽつぽつと話し始めた。

年齢は29歳、いじめに遭ってずっとひきこもりをしていたが、 これじゃあダメだと思い、自己開発セミナーを受けに栃木から新宿に来たそうだ。

セミナーで感銘を受け、自分も変わろうと思い、 咄嗟に駅前の被災した動物たちへの募金活動に全財産を渡してしまい 家に帰ることもできずに困っていたそうだ。

女はでも後悔はしていないと言う。 結局あなたのような優しい人が助けてくれたし、世界は愛で溢れてると思ったそうだ。

俺は、なんだかこのまま女の話に乗ってしまえばやれるのかなあなんて考えながら 脂浮きした化粧の下の女の妙にキラキラ光る瞳を見ていた。

ああ俺もこうだったのかなあとか 俺も、愛を信じてたのに なんでこんなことになってるんだろうとか、妙に冷静になっていた。

女はずっとイエス様がどうとか、徳川家康はお釈迦様の生まれ変わりだとか 大森靖子の歌は聖なる言葉で、私たちを光の園に導いてくれる 現代に遣わされた天使だとか話している。

なんとなく付けたラジオからは、湘南乃風が流れていて 折り合いがつかない時は自分勝手に怒鳴りまくって パチンコ屋逃げ込み、時間つぶして気持ち落ち着かせて

女は何かの神について話している。

目を閉じれば大好きな星 あんなに輝いてたのに 昔大好きだった湘南乃風が白々しく聴こえる。

女は大森靖子の聖なる預言について話している。

どうして俺はここにいるんだろう 今では雲がかすめたまま それはなぜかもわからぬまま 自分が点けたはずのラジオがずっと鳴っている。

俺が望んで招いた筈の、得体のしれない女は、ずっとテレビの話をしている。 テレビの神の話をしている。

女にとっての唯一の救いに思われる廃棄されるコンビニ弁当の蓋にこびりついたソースの小袋みたいな 薄っぺらい自意識が彼女の唯一の救いに思われて

俺も本当にその類の人間なんだなあ 救いなんてないんだなあと思えて、

今すぐ会いに行くよ、 手を繋いで歩こう 絶対離さない、

この手ヨボヨボになってもなんて こんな風に恋をして人愛してって夢を見ていた時の気持ちまで なんだか毳毳しくパッケージされて商品企画された

安っぽい幻想だったんだなあと思えた。

神の話をしていたはずの女が、急に言葉を止め ねえ、それで、しないの?と言った。 神の話はどうなったんだよというと、女はあなたも関西人じゃないでしょと言った。

すっかり萎えていた俺は今はゴムないからというと 女は大丈夫、ピル飲んでるからと言った。

さっきの女の話はどこまでが嘘でどこまでが作り話でどこかに真実があったのかもよくわからなくなって よく見ると女の手首には無数の薄い横線が走っていた。

俺は女に導かれるまま 女の生臭い口に自分の口を近づけ 腐った魚のような饐えた悪臭のする女の股に手を伸ばした。

ああ嫌だ、穢い。 こんな穢いところ触りたくもない。 女が自分の萎えた性器に、腥い舌を絡めてくるのがとても気持ちが悪くて吐きそうになる。

女に魚臭い性器を舐めるよう要求される。

なぜか女に逆らえずに性器に口を近づけると ぬめぬめした蛞蝓のような感触と、腐った漬物のような味が広がって 臭くて堪らなくて今すぐ逃げ出したい衝動に駆られた。

女はこうやって哀れな男の人に自分の身体を差し出すのもお勤めのうちなの といいながら殆ど萎えている俺の性器を自分の性器に無理やり捩込むと 腰を動かすよう要求する。 滴ってくる女の汗から垢のような匂いがして 俺は今本当に惨めだなあと思った。 ラジオを消そうとすると、女に制止された。 女の崇拝する大森靖子が流れていた。 編集された作り物みたいな歌声で そんな彼氏別れちゃいなよとか歌っていた。 女は、男なんてみんな汚れていて、靖子ちゃんだけが本物で 気持ち悪い男の人に1000回抱かれたら光の国に行けるのとか わけのわからない戯言を言っていて 俺は人生で一番最悪な射精をして、 アヤちゃんもユリちゃんもこんなに穢いのかなあとか考えていた。 安っぽい歌声と、饐えた臭いの充満する部屋で 女は大盛りのカップ麺を食べながら何かに祈っているようだったが 叶うことはないんだろうなと思った。

 

俺も。

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